あれはいつの
ことだったか。
旅の途中で広い
草原に出たことがある。
そこで私は
一匹のライオンを見た。
立派なたてがみを持った
大きく立派なライオンだ。
そのライオンの前を
一匹のウサギがとおりかかった。
私はきっと、
ウサギは食べられて
しまうだろうと思った。
ところが、
ライオンはウサギに
飛びかからなかったんだ。
私はライオンにたずねた。
「お腹がいっぱいだから
ウサギを食べないのかい?」
「いいや。腹ペコさ」
ライオンは
悲しそうに言った。
「ウサギは好きじゃないのかい?」
「いいや、大好物さ」
ライオンの腹が
ぐーっと鳴るのが聞こえた。
「じゃあ、なんで食べなかったんだい?」
私がそう言うと、
ライオンは自分の足元を見つめた。
私もライオンの足元を見た。
ライオンの足は
杭につながれていたんだ。
でも、その杭は
驚くほど小さかった。
「その杭のせいで動けないのかい?」
「そうなんだ。小さい頃から
ずーっとつながれてるんだ」
ライオンは、
そんな杭をいとも
簡単に引っこ抜けるほど、
自分が
大きくなっていることに
気づいていなかったんだ。
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by John.K
(jar/Flickr)