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ある家に若い娘がいたそうだ。
とても美しい娘だと人々は噂をし、
若い男たちが何人も彼女をたずねて行った。
しかし
娘は決して
家の外に出ようとしなかった。
だから、
その姿を見ることができたものは
ただの一人もいなかった。
腹立ち紛れに
ひとりの若者がこういった。
見るほどの価値もない娘なのさと。
世間の人も
そのうち言うようになった。
醜い娘に違いないと。
化物かもしれないと。
とうとう、
娘は悪魔に違いない
という噂がたった。
悪魔を恐れた村の人は、
娘を村から追い出してほしい
と牧師に頼んだそうだ。
そして
牧師は
村の人の願いを聞き入れ、
彼女を追放することに決めた。
牧師は
悪魔を退治するための剣を持って
娘の家に行き、その姿をついに目にした。
扉の向こうには、
目を血走らせた悪魔が立っていた。
するどい剣を持った
恐ろしい悪魔だった。
しかし、
牧師は気づいたのだ。
そこにあるのは、
一枚の大きな鏡だということに。
牧師は恐ろしい顔をした
自分の姿をまじまじと見た。
牧師は悟った。
ここに悪魔はいない。
罪のない誰かを
裁こうとした悪魔は
私の心の中にいるのだと。
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by John.K
(A❤︎/Flickr)